飲食業などを行うDDグループ(3073)は7月14日、現在の経営陣がファンドと連携して会社を買収する、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)の形で公開買付されると発表されました。発表直前の株価は1,443円で公開買付価格は1,700円。プレミアムは20%未満とそれほど大きな水準ではないものの、2025年2月末時点の同社の1株あたり純資産は331円だったので、それなりの金額だった印象です。もっとも、2025年2月決算では、1株純利益は127円と一定の利益水準はありました。
DDグループは「わらやき屋」「九州熱中屋」などの居酒屋を中心に幅広い飲食店舗を運営しており、買収した「BAGUS」などのネットカフェやホテルも経営しています。同社のウェブサイトによれば、国内店舗数は311店舗と一定の存在感はありますが、多ブランド展開をしていることもあり、そこまで知名度が高いわけではない印象です。しかし、今回の公開買付は、個人投資家にはインパクトのあるものだったでしょう。というのも、2025年2月時点で同社の株主は36,765名、そのほとんどは個人株主のため、かなり個人株主数の多い会社ということになります。
それもそのはずで、同社は株主優待を行っており、その還元額も結構大きいものだったのです。具体的には、100株保有している株主に3,000円分の優待チケットを年2回実施しており、前述の公開買付発表直前の株価1,443円からすると、144,300円の投資で年6,000円の優待がもらえるというものです。これは、1年あたり投資額の4%強の金額の優待となり、魅力的だったと言えるでしょう。
ただ、同社はいわゆるコロナ禍で大きな赤字に陥っていたことから配当は無配が続いており、配当面では魅力に欠ける面もありました。それでもこれだけの株主数ということは、株主優待の神通力たるや、といったところでしょうか。
一時は「株主平等の原則」などの観点で、足踏みしていたと言われる株主優待ですが、実は再度増加傾向にあります。これは本連載でも「東証の市場改革で株主優待が見直される?」「東証の市場再編、厳しい評価も。個人投資家はどう見るべき?」などの記事で取り上げている、東証の上場基準が厳しくなったことも一因です。株主数や時価総額の基準があり、しばらくは経過措置期間だったのですが、2025年3月に経過措置期間が終了、2026年からは上場廃止などの対象にもなる予定です。
株主優待を実施することで、株主数や株価の支えにもなり、上場基準を満たすことが可能になるだろうと考えていることも多そうです。日本経済新聞によれば、2024年に株主優待を新規導入した会社は131社で、これは過去最高だったとのことです。もちろん、東証の上場基準の話もありますが、2024年は新NISAが開始され、個人投資家の裾野が広がったことの影響もあるでしょう。
個人向けの会社の場合、自社製品などの優待は株主兼お客様の囲い込みにもつながります。日経ビジネスのインタビューに対し、イオン(8267)は100%個人株主でいいとまで言い切っており、株主をお客様株主として「イオンのお客様にこそ株主になってほしい」(同社執行役)とも話しています。2024年上場した東京地下鉄(9023)も乗車券のほか、メトロ内のそば屋のかき揚げトッピング無料券など、株主優待が注目されました。
冒頭で取り上げたDDグループは、公開買付に伴い、株主優待を廃止します。これに対し、同社の株主とみられる方が「自分の居住地で使える優待発行会社がなくなってしまう」とSNSで嘆いていました。
これはなかなかおもしろい観点です。DDグループのウェブサイトでは出店状況が示されており、311の店舗のうち、8割近い236店舗が関東・甲信越で、東北にも2店舗、九州・沖縄にも7店舗を出店しています。東北の2店舗はいずれも仙台市、九州の7店舗もいずれも福岡市にあるようです。ただ、東北・九州在住の方なら半年に一度は仙台や福岡に向かうのかも知れず、「優待が使える」会社だったと言えそうです。なお、同社は北海道には店舗展開をしていないので、北海道の方からは「優待が使えない」会社だったと言えるでしょう。
QUOカードや自社の製品類は別として、商品券・サービス券の類はその会社の店舗等が地域にないと使えません。商品券を返送することで一定の製品を送る会社もありますが、通常は商品券のほうが有利なことが多いようです。マネックス証券の株主優待検索では、飲食券だと147社の優待があります。DDグループ株主が乗り換えを検討できそうな、比較的優待水準のよい会社があるかについて見ていきましょう。直近の決算で黒字の会社のみ、広い地域をカバーする優待があるのかもチェックしていきます。
ユナイテッド&コレクティブ(3557)(97,600円、10,000円 ※2025年7月30日終値基準で優待獲得に必要な金額と、1年あたりの優待券の額面金額)。同社は「てけてけ」「the 3rd Burger」などを運営していますが、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県(4都県)・大阪府にしか店舗はなさそうです。テンアライド(8207)(28,400円、2,000円)は「天狗」などの居酒屋を運営している会社で、4都県と静岡県・愛知県・大阪府・京都府のみです。京都・大阪は店舗数も限定的です。
伸和ホールディングス(7118)(303,000円、20,000円)は2024年10月に札幌証券取引所に上場したばかりの会社で、「炎」という居酒屋を北海道中心に運営しています。札幌市、旭川市、釧路市、帯広市、函館市と北海道が中心ですが、一部の店舗が東京都や埼玉県にあるほか、「レッツゴーカレー」が青森県弘前市にあるようです。ワタミ(7522)(101,700円、8,000円)は優待券がランチタイム利用できず、「サブウェイ」でも使えないこと、ひとり1日500円までの上限がある点は注意ですが、青森県や秋田県、岩手県、宮城県、福島県など東北も含め、全国的に店舗があります。
ペッパーフードサービス(3053)(103,500円、6,000円)は一時大きな赤字で店舗閉鎖が話題となっていましたが、直近の決算では黒字化しています。同社は「いきなりステーキ」などステーキ店を運営しており、東北だと岩手県、宮城県、福島県、九州7県、鳥取県・島根県にも出店していますが、四国と沖縄県には出店していないようです。
フジオフードグループ本社(2752)(113,400円、6,000円)は「まいどおおきに食堂」を全国展開しており、東北の一部の県には店舗がないものの、ほぼ全国で使えると言ってよさそうです。大庄(9979)(118,800円、6,000円)は「庄や」などの居酒屋を中心に展開しており、北海道や岩手県、山形県、福島県や九州でもいくつかの県に店舗を展開しています。一方で、兵庫県、京都府、奈良県や広島県だと広島市にはないなど、東日本側の店舗網が充実している印象です。
ジェイグループホールディングス(3063)(79,400円、4,000円)は宮城県仙台市に展開しているほかは、千葉県・東京都・神奈川県、岐阜県・静岡県・愛知県、滋賀県・京都府・兵庫県など三大都市圏に集中しています。チムニー(3178)(127,000円、6,000円)は「はなの舞」や「さかなや道場」を展開しており、店舗数は実に471店舗、沖縄県を除く46都道府県に展開しているようです。
上記であげたように、多くの外食業者は株主優待を行っています。そのほとんどは自社で使える割引券で、割引券は株主向けの郵送物に同封できる上、お店に来てもらうきっかけになる、原価率などを考えるとコストも限定的というような考えがあるのでしょう。
マネックス証券の銘柄スカウターでは業種別の検索ができ、その中の外食カテゴリーには109社の外食企業があります。外食カテゴリーの中で、厨房機器・外食関連サービスという、直接に外食を行っていない会社を除いたものです。その109社のうち、ゼネラル・オイスター(3224)、光フードサービス(138A)、ホリイフードサービス(3077)、マルシェ(7524)、フレンドリー(8209)、サイゼリヤ(7581)の6社のみが株主優待を行っていません。冒頭で触れたように株主優待を開始する会社が増えている状況のなか、株主優待と相性のよい外食の会社で株主優待を行っていないというのは、なかなか特徴的と言えるでしょう。
逆に言えば、これらの会社は株主優待を開始(会社によっては再開)する可能性があり、その場合は株価にポジティブな影響がありそうです。上記の6社のうち、サイゼリヤは2024年7月に実施していた株主優待を廃止しています。おそらくサイゼリヤの店舗運営において株主優待券の取扱いがよくないとの判断もあったのでしょうし、再開の可能性は薄そうです。同社はギフト券類も取り扱っていません。
ホリイフードサービスは2023年に株主優待制度を廃止しています。もともとの優待もお米券で、飲食券ではありませんでした。同社は2023年に親会社が破綻しており、2023年3月期までコロナ禍以降の赤字が続いているなど経営混乱があったこともその理由ではないかと推察されます。一方、2024年には新しい親会社が破産会社から株式を買い取り、業績も黒字化しています。再開の可能性もありえるでしょう。
マルシェも2023年に株主優待を廃止しています。こちらもコロナ禍で業績が悪化しており、廃止時は徹底的なコスト削減のため、慎重に議論を重ねた結果、としています。一方で、2024年には特別優待を実施しています。また、大株主としてテンポスホールディングス(2751)が出資し、業績も黒字化するなど、一定の回復が進んでおり、もともと株主優待を実施していたことを考えても再開する可能性はあるのではないでしょうか。
フレンドリーも2023年に株主優待を休止しています。理由は、ホリイフード、マルシェ同様に「今般の業績状況」としています。同社は「廃止」ではなく、「休止」としているため、再開しようという意思は強そうですが、赤字が続いており、債務超過の状況でもあるため、再開の見通しが難しそうではあります。
ゼネラル・オイスターも2024年に株主優待を廃止しています。同社もコロナ禍で業績は悪化していたのですが、2023年3月期~2025年3月期は営業黒字ではあり、その中で廃止、復配を行っているので、再開の見通しは厳しいかもしれません。一方、優待廃止は2024年8月に発表したのですが、2024年7月末で1,788円だった株価は足元では671円まで下落しており、この株価を気にして再開するということも考えられます。実際に、くら寿司(2695)が2024年12月に優待を廃止したものの、多くの株主から要望・意見があり、株価の下落も手伝ってか、2025年2月にわずか3ヶ月で再開した例があります。
優待を実施していない中で、もっとも開始の可能性がありそうなのが光フードサービスです。同社は2024年2月に上場したばかりの会社で、東海圏を中心に立ち飲み居酒屋などを運営しています。業績も好調そうで上場後すべての四半期で営業利益を計上しており、配当も40円と現在の株価で1.85%と居酒屋の中では高い配当利回りがあります。業種的にも優待は行いやすそうです。
同社では決算説明会に合わせて、質疑応答内容を開示しています。直近の7月18日に行われた説明会での質疑が7月30日に開示されています。1問目が株主優待についてで、同社としては「余剰分については株主様に還元していこうという方針」「当社は飲食店であるため、株主優待は株主様にとって非常に魅力ある還元方法であると認識」としています。一方で、「出店していない北海道、関西、九州の株主様が『私の住んでるエリアには、お店がないじゃないか』と不公平感があってはいけないと考え、まずは配当を優先させていただきました」とのことでした。先に見た通り、地域が限定されていても株主優待を行っている例もあります。
また、上記の回答に続いて、「現在は出店していないエリアにも今後積極的に出店していこうと考えておりますので、株主優待について、より前向きに踏み込んだ検討をしていってもいいのではないかと考えております。現在、株主優待の準備等は粛々と進めておりますので、そちらの方はご期待いただければと思っております」としており、かなり踏み込んでいる印象です。上場直後ということで実施されていなかった株主優待の実施が今後期待できるかもしれません。
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株主優待が増加の背景、優待開始がこれから見込まれる会社は? | アクティビストタイムズ | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
MBOでの公開買付を発表したDDグループ(3073)、個人株主が多い理由とは?
飲食業などを行うDDグループ(3073)は7月14日、現在の経営陣がファンドと連携して会社を買収する、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)の形で公開買付されると発表されました。発表直前の株価は1,443円で公開買付価格は1,700円。プレミアムは20%未満とそれほど大きな水準ではないものの、2025年2月末時点の同社の1株あたり純資産は331円だったので、それなりの金額だった印象です。もっとも、2025年2月決算では、1株純利益は127円と一定の利益水準はありました。
DDグループは「わらやき屋」「九州熱中屋」などの居酒屋を中心に幅広い飲食店舗を運営しており、買収した「BAGUS」などのネットカフェやホテルも経営しています。同社のウェブサイトによれば、国内店舗数は311店舗と一定の存在感はありますが、多ブランド展開をしていることもあり、そこまで知名度が高いわけではない印象です。しかし、今回の公開買付は、個人投資家にはインパクトのあるものだったでしょう。というのも、2025年2月時点で同社の株主は36,765名、そのほとんどは個人株主のため、かなり個人株主数の多い会社ということになります。
それもそのはずで、同社は株主優待を行っており、その還元額も結構大きいものだったのです。具体的には、100株保有している株主に3,000円分の優待チケットを年2回実施しており、前述の公開買付発表直前の株価1,443円からすると、144,300円の投資で年6,000円の優待がもらえるというものです。これは、1年あたり投資額の4%強の金額の優待となり、魅力的だったと言えるでしょう。
ただ、同社はいわゆるコロナ禍で大きな赤字に陥っていたことから配当は無配が続いており、配当面では魅力に欠ける面もありました。それでもこれだけの株主数ということは、株主優待の神通力たるや、といったところでしょうか。
株主優待が増加傾向、イオン(8267)は「100%個人株主でいい」と発言も
一時は「株主平等の原則」などの観点で、足踏みしていたと言われる株主優待ですが、実は再度増加傾向にあります。これは本連載でも「東証の市場改革で株主優待が見直される?」「東証の市場再編、厳しい評価も。個人投資家はどう見るべき?」などの記事で取り上げている、東証の上場基準が厳しくなったことも一因です。株主数や時価総額の基準があり、しばらくは経過措置期間だったのですが、2025年3月に経過措置期間が終了、2026年からは上場廃止などの対象にもなる予定です。
株主優待を実施することで、株主数や株価の支えにもなり、上場基準を満たすことが可能になるだろうと考えていることも多そうです。日本経済新聞によれば、2024年に株主優待を新規導入した会社は131社で、これは過去最高だったとのことです。もちろん、東証の上場基準の話もありますが、2024年は新NISAが開始され、個人投資家の裾野が広がったことの影響もあるでしょう。
個人向けの会社の場合、自社製品などの優待は株主兼お客様の囲い込みにもつながります。日経ビジネスのインタビューに対し、イオン(8267)は100%個人株主でいいとまで言い切っており、株主をお客様株主として「イオンのお客様にこそ株主になってほしい」(同社執行役)とも話しています。2024年上場した東京地下鉄(9023)も乗車券のほか、メトロ内のそば屋のかき揚げトッピング無料券など、株主優待が注目されました。
「自分の居住地」で株主優待を利用できるか、という観点に注目
冒頭で取り上げたDDグループは、公開買付に伴い、株主優待を廃止します。これに対し、同社の株主とみられる方が「自分の居住地で使える優待発行会社がなくなってしまう」とSNSで嘆いていました。
これはなかなかおもしろい観点です。DDグループのウェブサイトでは出店状況が示されており、311の店舗のうち、8割近い236店舗が関東・甲信越で、東北にも2店舗、九州・沖縄にも7店舗を出店しています。東北の2店舗はいずれも仙台市、九州の7店舗もいずれも福岡市にあるようです。ただ、東北・九州在住の方なら半年に一度は仙台や福岡に向かうのかも知れず、「優待が使える」会社だったと言えそうです。なお、同社は北海道には店舗展開をしていないので、北海道の方からは「優待が使えない」会社だったと言えるでしょう。
QUOカードや自社の製品類は別として、商品券・サービス券の類はその会社の店舗等が地域にないと使えません。商品券を返送することで一定の製品を送る会社もありますが、通常は商品券のほうが有利なことが多いようです。マネックス証券の株主優待検索では、飲食券だと147社の優待があります。DDグループ株主が乗り換えを検討できそうな、比較的優待水準のよい会社があるかについて見ていきましょう。直近の決算で黒字の会社のみ、広い地域をカバーする優待があるのかもチェックしていきます。
DDグループ株主が乗り換えを検討できそうな9社をピックアップ
ユナイテッド&コレクティブ(3557)、テンアライド(8207)、伸和ホールディングス(7118)、ワタミ(7522)
ユナイテッド&コレクティブ(3557)(97,600円、10,000円 ※2025年7月30日終値基準で優待獲得に必要な金額と、1年あたりの優待券の額面金額)。同社は「てけてけ」「the 3rd Burger」などを運営していますが、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県(4都県)・大阪府にしか店舗はなさそうです。テンアライド(8207)(28,400円、2,000円)は「天狗」などの居酒屋を運営している会社で、4都県と静岡県・愛知県・大阪府・京都府のみです。京都・大阪は店舗数も限定的です。
伸和ホールディングス(7118)(303,000円、20,000円)は2024年10月に札幌証券取引所に上場したばかりの会社で、「炎」という居酒屋を北海道中心に運営しています。札幌市、旭川市、釧路市、帯広市、函館市と北海道が中心ですが、一部の店舗が東京都や埼玉県にあるほか、「レッツゴーカレー」が青森県弘前市にあるようです。ワタミ(7522)(101,700円、8,000円)は優待券がランチタイム利用できず、「サブウェイ」でも使えないこと、ひとり1日500円までの上限がある点は注意ですが、青森県や秋田県、岩手県、宮城県、福島県など東北も含め、全国的に店舗があります。
ペッパーフードサービス(3053)、フジオフードグループ本社(2752)、大庄(9979)、ジェイグループホールディングス(3063)、チムニー(3178)
ペッパーフードサービス(3053)(103,500円、6,000円)は一時大きな赤字で店舗閉鎖が話題となっていましたが、直近の決算では黒字化しています。同社は「いきなりステーキ」などステーキ店を運営しており、東北だと岩手県、宮城県、福島県、九州7県、鳥取県・島根県にも出店していますが、四国と沖縄県には出店していないようです。
フジオフードグループ本社(2752)(113,400円、6,000円)は「まいどおおきに食堂」を全国展開しており、東北の一部の県には店舗がないものの、ほぼ全国で使えると言ってよさそうです。大庄(9979)(118,800円、6,000円)は「庄や」などの居酒屋を中心に展開しており、北海道や岩手県、山形県、福島県や九州でもいくつかの県に店舗を展開しています。一方で、兵庫県、京都府、奈良県や広島県だと広島市にはないなど、東日本側の店舗網が充実している印象です。
ジェイグループホールディングス(3063)(79,400円、4,000円)は宮城県仙台市に展開しているほかは、千葉県・東京都・神奈川県、岐阜県・静岡県・愛知県、滋賀県・京都府・兵庫県など三大都市圏に集中しています。チムニー(3178)(127,000円、6,000円)は「はなの舞」や「さかなや道場」を展開しており、店舗数は実に471店舗、沖縄県を除く46都道府県に展開しているようです。
外食で「株主優待を行っていない」6社に注目、優待を行えば株価にポジティブな影響も?
上記であげたように、多くの外食業者は株主優待を行っています。そのほとんどは自社で使える割引券で、割引券は株主向けの郵送物に同封できる上、お店に来てもらうきっかけになる、原価率などを考えるとコストも限定的というような考えがあるのでしょう。
サイゼリヤ(7581)は優待再開の可能性は薄いか
マネックス証券の銘柄スカウターでは業種別の検索ができ、その中の外食カテゴリーには109社の外食企業があります。外食カテゴリーの中で、厨房機器・外食関連サービスという、直接に外食を行っていない会社を除いたものです。その109社のうち、ゼネラル・オイスター(3224)、光フードサービス(138A)、ホリイフードサービス(3077)、マルシェ(7524)、フレンドリー(8209)、サイゼリヤ(7581)の6社のみが株主優待を行っていません。冒頭で触れたように株主優待を開始する会社が増えている状況のなか、株主優待と相性のよい外食の会社で株主優待を行っていないというのは、なかなか特徴的と言えるでしょう。
逆に言えば、これらの会社は株主優待を開始(会社によっては再開)する可能性があり、その場合は株価にポジティブな影響がありそうです。上記の6社のうち、サイゼリヤは2024年7月に実施していた株主優待を廃止しています。おそらくサイゼリヤの店舗運営において株主優待券の取扱いがよくないとの判断もあったのでしょうし、再開の可能性は薄そうです。同社はギフト券類も取り扱っていません。
ホリイフードサービス(3077)、マルシェ(7524)は優待再開の可能性あるか
ホリイフードサービスは2023年に株主優待制度を廃止しています。もともとの優待もお米券で、飲食券ではありませんでした。同社は2023年に親会社が破綻しており、2023年3月期までコロナ禍以降の赤字が続いているなど経営混乱があったこともその理由ではないかと推察されます。一方、2024年には新しい親会社が破産会社から株式を買い取り、業績も黒字化しています。再開の可能性もありえるでしょう。
マルシェも2023年に株主優待を廃止しています。こちらもコロナ禍で業績が悪化しており、廃止時は徹底的なコスト削減のため、慎重に議論を重ねた結果、としています。一方で、2024年には特別優待を実施しています。また、大株主としてテンポスホールディングス(2751)が出資し、業績も黒字化するなど、一定の回復が進んでおり、もともと株主優待を実施していたことを考えても再開する可能性はあるのではないでしょうか。
フレンドリー(8209)は優待再開の見通しは厳しいか?ゼネラル・オイスター(3224)は可能性あり
フレンドリーも2023年に株主優待を休止しています。理由は、ホリイフード、マルシェ同様に「今般の業績状況」としています。同社は「廃止」ではなく、「休止」としているため、再開しようという意思は強そうですが、赤字が続いており、債務超過の状況でもあるため、再開の見通しが難しそうではあります。
ゼネラル・オイスターも2024年に株主優待を廃止しています。同社もコロナ禍で業績は悪化していたのですが、2023年3月期~2025年3月期は営業黒字ではあり、その中で廃止、復配を行っているので、再開の見通しは厳しいかもしれません。一方、優待廃止は2024年8月に発表したのですが、2024年7月末で1,788円だった株価は足元では671円まで下落しており、この株価を気にして再開するということも考えられます。実際に、くら寿司(2695)が2024年12月に優待を廃止したものの、多くの株主から要望・意見があり、株価の下落も手伝ってか、2025年2月にわずか3ヶ月で再開した例があります。
優待開始の可能性が最も高い光フードサービス(138A)
優待を実施していない中で、もっとも開始の可能性がありそうなのが光フードサービスです。同社は2024年2月に上場したばかりの会社で、東海圏を中心に立ち飲み居酒屋などを運営しています。業績も好調そうで上場後すべての四半期で営業利益を計上しており、配当も40円と現在の株価で1.85%と居酒屋の中では高い配当利回りがあります。業種的にも優待は行いやすそうです。
同社では決算説明会に合わせて、質疑応答内容を開示しています。直近の7月18日に行われた説明会での質疑が7月30日に開示されています。1問目が株主優待についてで、同社としては「余剰分については株主様に還元していこうという方針」「当社は飲食店であるため、株主優待は株主様にとって非常に魅力ある還元方法であると認識」としています。一方で、「出店していない北海道、関西、九州の株主様が『私の住んでるエリアには、お店がないじゃないか』と不公平感があってはいけないと考え、まずは配当を優先させていただきました」とのことでした。先に見た通り、地域が限定されていても株主優待を行っている例もあります。
また、上記の回答に続いて、「現在は出店していないエリアにも今後積極的に出店していこうと考えておりますので、株主優待について、より前向きに踏み込んだ検討をしていってもいいのではないかと考えております。現在、株主優待の準備等は粛々と進めておりますので、そちらの方はご期待いただければと思っております」としており、かなり踏み込んでいる印象です。上場直後ということで実施されていなかった株主優待の実施が今後期待できるかもしれません。